世界を揺るがした「ソ連8月クーデター」― 新生ロシア誕生の瞬間を目撃する
異才セルゲイ・ロズニツァが映し出す、ロシアの光と影
彼らが見ているのは“自由”の始まりだったのか?
1991年8月19日。ペレストロイカに反対する共産党保守派がゴルバチョフ大統領を軟禁し軍事クーデターを宣言した。テレビはニュース速報の代わりにチャイコフスキーの「白鳥の湖」を全土に流し、モスクワで起きた緊急事態にレニングラードは困惑した市民で溢れかえった。夜の街では男がギターを掻き鳴らしウラジーミル・ヴィソツキーの「新時代の歌」を歌い、ラジオからはヴィクトル・ツォイの「変化」が流れた。自由を叫んだ祖国のロックが鳴り響くレニングラードは解放区の様相を呈し、8万人が集まった宮殿広場でついに人々は共産党支配との決別を決意する—— 本作品はレニングラードの8名のカメラマンが混乱する市中に紛れ撮影した映像をセルゲイ・ロズニツァが手にし、3日間で終わった「ソ連8月クーデター」に揺れながらもロシアの自由のため立ち上がったレニングラードを再構成する。
それぞれにとっての1991年の夏
本作品の映像はアレクサンドル・ソクーロフの製作や後にロズニツァも所属し初期作品を制作した事で知られるレニングラード・ドキュメンタリー映画スタジオの8名のカメラマンがモノクロフィルムで撮影した映像である。ロズニツァはクーデターが起きた1991年8月、数学者から映画監督へ転進する準備をしながらキーウでこの出来事を見つめたという。25年の時を経てロズニツァは変化を遂げようとするレニングラードを懸命に記録した同窓の意を受け取り、それぞれの想いを込め1991年夏のレニングラードを映画にした。
過去の呼びかけが現代に問いかけること
レニングラード市長のアナトリー・サプチャークはモスクワのホワイトハウスで市民と共に反クーデターを訴えるエリツィンを支持し、レニングラードの各所で開かれた集会やラジオ放送で市民にクーデターへの抵抗を訴える。そんな躍動するサプチャークを追っていたカメラに映り込んだ若かりしウラジーミル・プーチンの姿をロズニツァは逃さなかった—— 民主化に熱狂する大群衆の中、「苦しみ多きわが国民よ、騙されるな!」と書いたプラカードを掲げた女性がスクリーン越しの私たちに問いかける。
金平茂紀
ジャーナリスト。早稲田大学大学院客員教授。沖縄国際大学非常勤講師。
1953年 北海道旭川市生まれ。1977年TBS入社。以降 同局でモスクワ支局長 ワシントン支局長 「筑紫哲也 NEWS23」編集長 報道局長などを歴任。2010年より「報道特集」キャスター。2022年9月でレギュラー退任。以降 同番組の「特任キャスター」に。2004年度 ボーン上田記念国際記者賞受賞。2022年度 外国特派員協会「報道の自由賞」受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』『筑紫哲也 NEWS23とその時代』など多数。翻訳書に『じじつは じじつ ほんとうのことだよ』。
2/4(土)・5(日) | 12:10 2/5(日)上映後トーク |
||
2/6(月)~10(金) | 13:05 | ||
2/11(土) | 10:30 | ||
2/12(日)~17(金) | 10:00 | ||
2/18(土)・19(日) | 12:20 | ||
2/20(月) | 13:40 | ||
2/21(火) | 休 館 | ||
2/22(水) | 13:40 | ||
2/23(木祝) | 12:55 | ||
2/24(金) | 13:40 | ||
2/25(土)・26(日) | 10:15 | ||
2/27(月) | 休 映 | ||
2/28(火)~3/3(金) | 11:00 | ||
3/3で終了予定 |
一般 | 1,800円 |
シニア | 1,200円 |
専門・大学生 | 1,000円 |
中学生・高校生 | 1,000円 |
小学生以下 | 700円 |
会員 | 1,000円 |
★入場システム、サービスデー・その他割引 |